フリーランスのアニメーターは自分でやりたい仕事を選び、やりたくない仕事は断ることができます。
しかし、アニメーターの多くは人から与えられた仕事ばかりしてしまいます。
その原因と危険さを説明します。
「自分の好きな仕事しかしたくない」
そう思ったからフリーのアニメーターになったにもかかわらず、次から次へと依頼された仕事をこなすだけ・・・
私は一時期こういった仕事の仕方をしていました。
『仕事を選ぶ』という概念すら当時はありませんでした。
アニメーターを目指す理由も、アニメーターを続ける理由は人それぞれです。
そんな中で、
『絵が上手くなること』
『アニメに関われること』
それさえ出来ればかまわない、というタイプの人ならばアニメーターの仕事はどんな仕事内容であっても楽しめるし、その後の役に立つと思います。
しかしそうでない人は、
自分が関わる仕事や作品は選び、そしてやりたくない仕事は断るべきなのです。
その理由を説明していきます。

アニメーターは命がけの仕事
アニメーターは命を落とす仕事です。
もちろんアニメーターに限らずどんな仕事であっても、命の危険はあります。
しかしアニメーターは死の危険性に本人の自覚が薄いという危険性が大きいのです。
「人生いつ死ぬかわからないから好きな事をして死にたい」
そういった欲望を満たすのにアニメーターという職はぴったりです。
自分の大好きな『アニメ』に関われて、大好きな『絵を描くこと』で生きていける。
そういった環境により、たとえ低賃金で重労働でも『幸福感』が生まれやすいのです。
しかし実際には、
・過労により『肉体的に死ぬ』可能性。
・精神を病んで『絵描きとしての人生が死ぬ』可能性。
これらが常に隣り合わせになる仕事なのです。
しかし「好きな事をしている」という幸福感や責任感のせいで文句を言ってはいけないような気持ちになってしまったり、
「嫌なことを我慢して仕事するよりマシだ」という考えから、現状維持こそが最良だと思い込みやすくなります。
苦しんでいる自覚がなくなっていく
嫌な仕事や嫌いな作品であっても断れず、何なら『断る』という概念すら忘れている場合がアニメーターにはあります。
貴重な時間を使い、体も心もすり減って動けなくなった時になって初めて「好きな作品を全然やってない・・・」と気付く。
なんてことになりかねません。
アニメーターは命の危険性と隣り合わせの仕事でありながら、アニメーター自身にその自覚は薄いものです。
・アニメーターの仕事が楽しすぎてその危険性に気づいていない人。
・逆に仕事や生活が苦しすぎて判断力が低下している人。
など、理由はそれぞれですが『死ぬかもしれない』という危機意識をもって働いている人はとても少ないのです。
もしくは気付いているけれど解決方法がない、もしくは考えたくないから現状維持を続けているのかもしれません。
そうやって締め切りまでヘトヘトになって働き、かろうじて終わったら次の締め切りが迫ってる。
なので働けば働くほど仕事以外の事を考える余裕がなくなっていくのです。
そうなっては仕事を『選ぶ』なんてこと出来ません。
頭の中は「この仕事をどうやって終わらせるか?」で満たされており、
仕事の無い時は「どうやって仕事のストレスや疲労を癒すか?」しか考える余裕がないのですから。
しかし、だからこそ仕事を選ぶ、または断る勇気が必要です。
仕事漬けの日々を送ると、逆に「仕事が無い状態」に恐怖や焦りを感じ出すことすらあります。
そうなるともう休むことすら苦痛になり、次から次へと仕事の依頼を受けてしまいます。

自分の遺作はこれでいいのか?
そんな時は考えてみてください。
「今やってる作品が自分の遺作になっても後悔はないか?」
「その作品には自分の命をかける価値があるのか?」
ということを。
そんなこと考えたことも無いかもしれません。
または考えずに働きたいかもしれません。
しかし命がけの仕事であるからにはそれを考えた方がいいです。
中には、
「仕事には責任を持つべき。自分の興味なんか関係なく、どんな仕事も頑張らなきゃならない!」
という考えの人もいると思います。
でもそんなことは『体力、技術、財力』に余裕のある人が考えればいいことです。
しかしアニメーターの多くは体力も技術も財力も持っていません。
そしてそれを持っていない状態でアニメ業界で働くことは、常に命の危険がある状態です。
だからこそ、命を懸けられる仕事以外に自分を捧げてはいけません。
この中でも『体力』は特に優先的に守ってあげてください。
これが無いと他の何も得られません。
実際に多くのアニメーターは契約上禁止であっても仕事の掛け持ちをしています。
それはお金を稼ぐためであったり、好きな作品に参加するためであったりします。
『好きな事』『やりたい事』を優先しないと人は簡単に心が壊れてしまう。
ということをアニメーターも本能的には理解しているのですが、理論的には理解していない。
アニメーターはそんな人たちの集まりでもあるのです。
体力の重要性
体力があるかどうかは自覚しずらいものです。
たとえ面倒でも、毎年健康診断は受けましょう。
会社で行っていないなら、自費でも病院に行くべきです。
自治体が安い料金でおこなってるものもあるので住んでる場所で調べてみましょう。
例えばゲームのRPGにおいて「休む」という選択とそのタイミングはとても重要。
レベルを上げようとして戦ってばかりいると体力は減り、瀕死になったり病気になったりします。
場合によっては逆に能力は下がり行動不能になったりします。
重要な戦いを控えている時こそ、その前には休んで体力を回復させてから挑みます。
仕事が大事だと思っている人こそ、休むことを重要視する発想になるはずなのです。
私は休むことの大事さは実体験とゲームから学びましたが、ピンとこない人は自分の興味のある分野で考えてみてください。
休まない方が効果が出るものはそう無いはずです。
死なない働き方
仕事を選べ、と言うのは簡単ですが、実際には自分の実力などが影響するのでやりたい仕事ばかり受注するのは難しいものです。
なので私はまずはやりたくない仕事は断る、ということから始めました。
それは単価の安い仕事、作画が大変なわりにやりがいのない仕事、スケジュールの短い仕事、苦手な人との仕事などです。
自分の価値観に照らし合わせて、「やりたくない」と明確に思える仕事は全部断るようにしました。
収入は減りましたが、ストレスはもっと減りました。
そしてに『死ぬような働き方』を変えました。
徹夜を辞め、週に1度は一切働かない日を作り、適度な運動をするようにしました。
そうすることで仕事量は減るので収入は下がりましたが、間違いなく体の調子は良くなりました。
睡眠をたくさんとり、休みの日があることで頭も冴えるので、仕事内容以外のことを考える余裕も生まれました。
私の場合は結果的にそれが「アニメーターを辞めた方が自分のためでは?」ということに繋がります。
つまり従来の働き方をしていたら「アニメーターを辞めたい」という自分の気持ちにも気付けなかった可能性があります。

「アニメーターの仕事が好きだ」という気持ちの人も、
「何故好きなのか?それを満たすためには何をすべきなのか?」
ということを見直すきっかけにもなります。
自分の気持ちを知るためには「余裕」が必要です。
それは時間の余裕であったり体力や財力の余裕であり、これを失うと頭がまともに働きません。
そしてアニメーターはこの全ての余裕が無い仕事なので、自分の気持ちを知るためにも無理してでも余裕を作るべきなのです。
無理して働くのではなく、無理してでも休んでください。
最後に
私自身がアニメーター時代に仕事を断らないタイプであり、その結果たくさんのマイナス要素を感じました。
なので今回は『仕事を選ぶこと、断ること』の大事さを説明しました。
この仕事を選ぶという発想は「技術が無いと出来ない」と思う人が多いとおもいますが、
本当は健康な心と体があって初めて出来ることなのです。
「仕事を選んでる場合じゃない!」と仕事を詰め込んでいる人は、どんな方法を使っても良いので仕事を止めてみてください。
そして休みをとり、仕事以外の事を考える余裕ができたらこの記事で書いたことを考えてみてください。
「仕事を断る」という事は、「仕事を取る」事と同じかそれ以上に重要な事なのです。
