アニメ業界について

私がアニメーターを辞めた理由

私は22歳から32歳までの10年間アニメーターをやっていました。

しかし、もうこれ以上続けられないと思い、この度辞めました。

その経緯をお話しする事で、今アニメーターを辞めようか悩んでいる人や、

アニメーターになりたい人の参考になれば、と思います。

アニメーター経歴

まず、大まかな私の経歴を説明します。

 

2008年(当時22歳)、小さな下請会社に入社し4年働く。

2012年、次に大きめの元受け会社で1年働く。

2013年、フリーランスとなり、自宅作業で5年働く。

2018年(32歳)、アニメの仕事を辞める。

 

何故辞めたのか

何故辞める決心をしたのかというと、

「報われない」という感情が限界を超えたからです。

 

アニメーターは頑張れば頑張るほど損をするという仕組みになっています。

そんな仕組みの中で頑張って働くことに心が耐えきれなくなってしまいました。

頑張るほど損をする

料金制度

アニメの単価は作品や会社に関係なく、基本的に1律です

もちろん例外や、わずかな差はありますが、

作品内容や作業難易度によっての値段の差はほぼ無いのです。

 

原画マンの例で言うと、たった1枚の簡単な絵を描く仕事と、

10枚の難しい絵を描く仕事が同じ値段なのです。

 

これでは頑張って多い枚数の仕事をするほど収入が減ります。

だからといって、簡単で枚数の少ない仕事ばかりしていては

アニメーターとして成長できません。

 

ちなみに私の場合は

1カット4000円前後

(1原2000円、2原2000円)

の仕事が多かったです。

 

つまりどんなに簡単で早く描ける内容の1カットも、

難しく時間のかかる内容の1カットも等しく4000円となります。

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スケジュールの崩壊

アニメ作りの現場は常にスケジュールがありません。

そんな中で絵のクオリティーを上げようとすると時間がかかり、

作業量は減ってしまいます。

 

そうすると、ただでさえ少ない収入はさらに減り 生活できなくなります。

なので「作業量が多いだけで手を抜いて仕事をする人」

が稼げるシステムになってしまっているのです。

 

これらが原因で良い仕事をしようと頑張る程に作業量と収入は減り、

逆に「仕事のできない奴」 という評価を受ける可能性もあります。

 

逆に、クオリティが低かろうと仕事量を多く捌くほど収入は増えます。

そして人手不足の為にこんな人でも仕事の依頼は途絶えません。

 

単価とスケジュールは何年たっても改善されないのに、求められる絵のクオリティ

は日々上がってくので、作業時間はどんどん足りなくなっていきます。

そんな業界で働くうちに私は体がついていけなくなり、

次第に心もすり減っていきました。

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商業アニメ制作の欠陥

絵が劣化して世に出る

アニメーターとして働き10年が経った頃にはもう絵を描くのが苦痛になり、

働けば働くほどアニメーターのつらい部分が見えてきました。

 

そんな中でも特につらい事は、

「どれだけ質の高い作画であっても、それが完成した画面には反映されない」

 ということです。

 

これはアニメーターにとっては常識ですが、

視聴者にはあまり知られていないかもしれません。

 

販売されている原画集などを見ると、「テレビで見たときよりも上手い」 

というのがよくわかります。

 

私はアニメーターだったので、絵についてのみ語りますが、

「作業時よりも完成時のほうが絵が劣化している」

これはアニメ作りにおいて致命的な欠陥だと私は思っています。

 

なぜ、こんなことが起こるのか

アニメの制作が分業によって行われているからです。

アニメの完成画面は、1枚の絵であっても多くの人が描いています。

絵が劣化する仕組み

「なぜ絵が劣化するのか?」というのを、

アニメ作りを全く知らない人向けに説明します。

 

まず原画マンが絵を最初に描きます。(これがレイアウト、1原)

それに演出的指示や修正が描かれます。(演出修正)

それを元に作画の修正がされます。(作監修正)

必要であればさらに修正されます。(総作監修正)

この時点が最も絵の質が高い状態です。
ここから逆に質が下がっていきます。

総作画監督の絵を元にしてまた原画マンが絵を描き直します。(これが原画、2原)

ほぼ間違いなく総作画監督の絵はここで劣化します。

これを演出、作画監督、総作画監督がチェックし必要ならばまた修正します。

ここでわずかに絵の質は上がりますが、スケジュールが無いとこの工程は飛ばされやすい。

その原画を動画マンがトレスし、さらに原画と原画の間の絵をかきます。(動画)

ここは最終的なテレビに映る線を描く工程なので重要なのですが、教育がなされず、作業時間は無く、海外に委託することも多く、ここでかなり劣化します。

それをチェックし、問題があれば修正します。(動画検査)

問題の起きやすい動画を最後の最後に直す、非常に大事で負担のかかる役職です。

しかし最も物量が多く、最も時間が無いのですべてを修正できるわけではありません。

 

線画としての工程はここまでです。

絵の質が平均化される

多くの人が同じ絵を何度も繰り返し描き直すことで、

一旦クオリティーは上がり、途中で下がり、

そして完成画面では最初に描いた絵は見る影もなくなります。

アニメ作りというのは、10点の絵を70点に引き上げることもできますが、

100点の絵も70点にしてしまいます。

 

これは大量の絵を大人数で作画するために考えられた方法なので、

必ずしも悪い事ではありません。

 

ただ、私には向いていませんでした。

自分の絵が劣化するのも、自分が人の絵を劣化させるのも、

どちらも耐えられませんでした。

志望者と離職者が絶えない

本来アニメ作りは職人的な能力が必要とされる作業で、

アニメーターのトップレベルの人たちの技術は常軌を逸しているほどに高いのです。

 

しかしアニメーターは常に人手不足なので、

本来の水準に届いていない実力でもアニメーターになれてしまいます。

 

なのでたくさんのアニメーター志望者が毎年入ってきます。

しかし同様に毎年たくさんの離職者も出ます。

結果アニメーターは常に

「たくさんの新人とほんのわずかな生き残りしかいない」

という状態になってしまっています。

 

なので、現状のアニメ作りの現場は

「絵の上手い人たちが集まって作品を作っている」

というものではなく、

「絵の上手いほんの僅かな人たちが、業界のレベルをむりやりひっぱり上げている」

という状態です。

 

本来の高い技術が正しく世に伝わらず、

適切なスケジュールと報酬が与えられない上に、

絵のクオリティを上げようとすればするほど報酬は減る。

 

この「報われなさ」に耐えきれなくなり、

私はアニメーターを辞めることを決心しました。

アニメーターを目指す人へ

現状のアニメ業界ではこのシステムを変えるのは難しく、

アニメーターを続けられる理由は

「アニメ作りの知識や技術を学べる」という事と

「好きだから、楽しいから」 というものくらいです。

 

これが趣味なら良いですが、アニメーターは仕事であるはずです。

しかし仕事にしては欠陥があまりにも多すぎます。

 

少なくとも私にとってはもう仕事だと思えなくなったので辞めましたが、

それでも毎年たくさんのアニメーター志望者が入ってきます。

そんな人たちの為にも、仕事の実状を明かしました。

 

これらを踏まえた上で、それでもアニメーターになりたいかどうか、

しっかり考えてほしいです。

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