現役アニメーター向け

描けば描くほど絵が下手になっていった時の話

絵を指導する人はよく「描いた分だけ絵は上手くなる」と言います。

基本的にはそうだと思いますが例外もある上に勘違いすると大変危険な思想でもあります。

私が実体験で学んだ事をまとめました。

 

否定される毎日

↑の記事でも書きましたが、

私はアニメーターとして10年働きましたが、

辞める直前はほとんど絵が描けなくなっていました。

 

明確なきっかけがあったわけではなく、

絵を否定されるストレスが10年かけて蓄積していった結果です。

 

アニメーターの仕事では、自分が描いた絵に「演出修正」と「作画修正」の2種類の修正が入ります。

 

分業化されているアニメ作りにおいて、これは作品の水準を上げるために必要なことなのかもしれません。

アニメーター個人にとっても勉強になるので大事なことです。

 

しかし、絵描き個人としては、

限られた時間の中で自分の最高の絵を描いたにもかかわらず、「それは間違っている」という訂正を延々と受け続ける

ということでもあります。

 

働き始めの頃は、「絵を直してもらえて勉強になる」「上手い絵が見れて楽しい」

などと深く考えていなかったのですが次第につらくなっていきました。

 

仕事だと割り切って描いていればつらくないのかもしれませんが、「もっと上手くなりたい」「こんな修正を入れられてはいけない」

と自分を追い詰め続けてしまいました。

 

その結果、どんな絵を描いても「どこか間違っているんじゃないか」「どれだけ頑張ってもどうせ修正が入るんだ」

と自分の絵を信用できなくなったのです。

 

そうして描けば描くほどに迷いが増えていって自信は無くなり、描く絵は「指示通り」「設定通り」のつまらないものになっていきました。

自信と成功体験

自信は成功から得る

自信は大事です。

自信があるからこそ生き生きとした絵が描け、自分を見失わずにいられます。

 

しかしアニメ業界はとんでもなく絵の上手い人がいます。それはもう常軌を逸するほどのバケモノです。

自信を無くすには十分すぎる環境であり、私もまたその一人となってしまいました。

 

仕事で褒められたり自信を持てることが無いというのはとてもつらいことです。

それこそ絵が描けなくなるほどに。

だからこそ、成功体験というものが大切になります。

無意識の努力

成功体験を得られると、人は「もう一度やろう」と思えます。

それを繰り返すことでそれは無意識の努力になります。

 

「努力するぞ、頑張らなきゃ」という意識的な努力は忍耐力が必要なので長続きさせるのが大変です。

 

無意識の努力は成功体験という「快感」が原動力なので長続きします。

これが続くと絵の上達にも繋がるし、心の負担にもなりません。

よく世間で言われている「努力は夢中に勝てない」というのはまさにこの事です。

成功できることを探す

仕事の中で成功体験が積めるのが望ましいですが、もし仕事の中に無いならば仕事の外でもいいので探してみてください。

 

 

成功体験は大きなものでなくていいのです。

たとえば「友人や家族に絵を見せて褒められる」でも「ネットに絵を上げて同好の者に褒められる」でも。

 

勿論、絵以外のことでもいいです。

「褒められる、成功する」という体験は心を柔らかくしてくれます。

絵描きである前に人間なのですから、心が最優先。

成功せず評価されないことは、なかなか続けられません。

自分が本当にやりたいことを思い出す

アニメーターの場合

これはアニメーター志望の人も、現役アニメーターの人もですが、

自分のやりたいことは商業アニメでしか叶えられないのか?

という疑問に答えてみてください。

 

そうだという人には関係ないことですが、そうじゃないかも・・・と思った人。

今は個人でもアニメが作れるソフトがいろいろあり、ネットで公開することもできます。

ほかにも商業でノウハウを学んで、その後辞めて個人制作をするという計画もアリだと思います。

 

商業でやる以上は、自分の好きな作品やキャラクターだけを描くわけにはいきません。

内容も自分の描きたいように好き勝手には描けません。

たくさんの制約があり、修正をうけ、統一化するのが今の商業アニメの一般的な作り方です。

 

「絵を描くのが好きだから、得意だから」という理由で多くの優秀な絵描きたちがアニメ業界に入ってきます。

 

そして

こんな業界だとは思わなかった

とても生活できない

と言いながら去っていくのを見ました。

 

体や心を壊す人もいますし、時には命を落とす人さえいます。

なぜ絵を描くのか

「絵を描く」にもいろいろ種類があるはずです。

「自分はどんな絵を描きたいのか?」

「それはアニメ業界が1番適しているのか?」

「趣味ではなく仕事にする理由はあるのか?」

自分の「絵を描く仕事に就く理由」をもう一度考えてみてください。

 

私は技術不足はもちろんのこと、商業アニメの作り方も自分の性に合いませんでした。

「アニメを作るのは楽しい。でも商業アニメの制作システムはあまりに無駄や理不尽が多く苦痛」

これが10年間アニメーターをやった結果での個人的な感想です。

 

絵の勉強や上達も大事なのですが、時間をしっかり取って自分の本当にやりたいことを考えてみてください。

それこそが心の健康の為にもなり、絵の上達の効率化にも繋がります。

 

アニメ業界が天職だならば何も言う事はありません。

ただ、向いてないと思いながら働き続けるにはデメリットだらけの業界であることは間違いありません。

そんな人たちの心の傷が浅いうちに少しでも早く「自分の心は傷ついてる」と自覚してくれることを願っています。

 

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bebe
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元アニメーターの経験を元に『アニメーターになる前に知っておくべきこと』を伝えます。