アニメ業界

アニメの作画崩壊は何故起こるのか?

アニメの作画崩壊は定期的に起きます。

その度にネット上では話題になり、業界人には問題視され、視聴者には笑われたり怒られたりしています。

そんな作画崩壊は、何故起こるのか?

アニメーターが作画崩壊の現場に出くわしたら?

私の知る限りで説明します。

この記事はアニメーター目線のみで語る作画崩壊の話題になります。

それ以外の工程(背景、色、撮影など)の話題は当記事では扱いません。

ご理解の上、お読みください。

そもそも、

作画崩壊は何故起こるのか?

それは「時間」と「人材」が不足しているからです。

まずはその2つについて説明していきます

作業時間の不足

ここでの時間とはスケジュールのことを指します。

つまり、単純に「描く時間」が無いのです。

 

基本的にはどの作品もスケジュールはありません。

まともな作品も稀にありますが、そちらが例外と言っていいいほど稀です。

 

描く時間が短いほど絵が荒れる。

非常に簡潔で、当たり前ですが、

この「描く時間が無い」ということは、アニメ業界がずっと抱えていて今なお解決していない致命的欠陥です。

 

この「描く時間」が極端に無い場合に作画崩壊が起こり得ます。

優秀な人材の不足

原画マン不足

原画マンの能力の差は大きく、能力の高い原画マンや、人気の原画マンを1つの作品に集めるのは難しいです。

そういった原画マンは各会社の奪い合いになり、人を囲える力やお金を持っている会社に持っていかれます。

 

さらに作画監督が不足しているので、本来はまだ作画監督ができないレベルの原画マンに作画監督をやらせている現場もあります。

 

そして人手に対してアニメの作品数が多すぎるので、ほとんどの作品は狙い通りの人材の質や数を集められません。

動画マン不足

動画マンも数は足りません。

 

さらに原画マン同様に、原画マンが足りないので無理やり原画をやらされている現場もあり、さらに動画マンの数は足りなくなります。

 

そしてスケジュールの無さから、「国内よりも作業スピードの速く、単価の安い海外に委託してしまう」ということが昔から使われています。

これは絵の質が下がるだけでなく、データでやりとりする際に絵がズレるなどのミスも起こりやすく、そうなると結局日本で描きなおすことになります。

「安く速く」が目的だったのに、結局2度手間になり時間と労力がかかる。

ということになることがあります。

 

さらに、最近は国内の動画の質も下がってきており、「日本でやれば大丈夫」というものでもありません。

作画監督不足

視聴者が見ているアニメは、「絵の上手い人が必死に修正してなんとか見れるレベルにしているの」というのが現状です。

その修正をしているのが作画監督や総作画監督です。

 

なので作画監督が不在の時、修正前の絵がそのままテレビに映ることになります。

作画崩壊と一般的に呼ばれているものはこのパターンが多いと思います。

 

不在といっても、「本当にいない」という場合もあれば、「修正を入れる時間が無い」という意味で、作画監督が作業に参加出来ないという場合もあります。

 

作画崩壊と呼ばれている絵は、「作画監督がいなかったらどうなるか?」という一面でもあるのです。

作品数の増加

アニメの本数は人材に対して多すぎます。

これにより作品ごとに必要な質、数のアニメーターが行き届いていません。

 

さらに、アニメは本来「動かすこと」を考えてデザインされますが、

最近は線が多く細かく、美麗な止め絵を求められることもあります。

必ずしも視聴者が望んでいるのではなく、「視聴者が望んでいるだろう」と思い込んでいる者によってこの方針になっている気さえします。

この方針はただでさえ時間が無いアニメーターの作業時間をさらに奪います。

 

ちなみに絵柄の違いで賃金の差はさほどありません。

「線が多いリアル系作品と、線の少ないデフォルメ系作品の単価が同じ」というのはよくあります。

アニメーターの手抜きではない

「絵が下手だから手抜きだ」という視聴者からの意見を聞いたことがあります。

しかし、これはほとんどの場合間違いです。

 

そもそもこれは「アニメーターは絵が上手いはず」という考えが前提になっています。

絵が上手いはずのアニメーターが描いているのに、下手だ!だから手抜きだ!

という論ですが、前述したとおり、アニメーターの質は上下差は激しい。

つまり下手な人もたくさんいるのです。

 

そして「本当に上手い人の絵」というものは、手を抜いても上手いです。

「手を抜いたから下手」というのはほぼありえません。

手を抜く暇すらないほど追い込まれていたので、絵が崩れるのです。

まとめ

作画崩壊は

・絵を描ける人材が集められなかったときに起こる。

・絵を描く時間が無い時に起こる。

つまり、絵を描ける「人」と「時間」が失われた時、作画崩壊は起きるのです。

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アニメーターの立場から見た作画崩壊

ここからはアニメーター向けの内容になります。

作画崩壊を起こす会社

作画崩壊は人材か時間が無い時、もしくはその両方が無い場合に起こります。

なのでアニメーターにとっては自分自身が起こすこともありえるし、

人が起こしたものを自分が尻拭いすることもありえます。

 

決して他人事ではありません。

その対策、心構えを持っておくことが必要です。

 

作画崩壊は基本的にスケジュールが無いことが原因なので、

スケジュールが極端に無い仕事ばかりの会社は要注意です。

その場にいるのは危険なのですみやかに離脱しましょう。

 

「アニメ会社なんてどこにいっても同じだ」

と思うかもしれません。

一理あります。

しかしわずかな差はあります。

 

アニメーターであるかぎり、どこにいっても似た良ような苦しみはあると思います。

しかし、だからこそ少しでも環境の良いところへ移るべきです。

そのほんの少しの改善で命を守れるかもしれません。

 

スケジュールを1度破る人は、必ずもう1度破ります。

作画崩壊を起こす会社は、必ずまた起こします。

だから逃げましょう。

もし、「スケジュールを破ることは悪い事だ」という空気が一切無い会社ならば、すぐに別の会社に移ることを勧めます。

 

アニメ会社は数多くあり、そのほとんどは劣悪な環境です。

なので、どうしてもアニメ会で働きたい場合は、

社様々な会社の情報を集め、移り、少しでも自分の周りの環境を改善していくしかありません。

世間から叩かれる?

作画崩壊を起こすと話題になります。

ネットが発達した今、映像や画像がネットに貼られ、一気に拡散されます。

そして笑いものにされ、会社やスタッフは特定され、誰々の責任だ!と騒ぎます。

 

アニメに限らず、問題が起きた時に、責任は誰にあるのか?

ということを追及する流れが世の中に常にあります。

 

アニメーターの立場として、そんな作品に関わっては「会社や自分の名を落とす」ということを気にするかもしれません。

しかし、仕事をくれるのは視聴者ではなく会社であり、名が落ちるよりも命を落とす方が嫌でしょう。

アニメ制作というハードワークは、冗談ではなく人の命が失われるレベルのものです。

実際に過労死や自殺者が出ています。

 

スケジュールや人材がまともじゃないという劣悪な環境での労働。

自分と関係ないことが理由で、低品質な出来の作品を世に出すストレス。

挙句の果てにヘロヘロになって作り上げた作品を、ネットで晒しあげられて笑いものにされる。

苦しんで働いた上にこんな仕打ちを受けたら、体を壊し、心を病み、命を落とす可能性もじゅうぶんあります。

最後に

作画崩壊は、視聴者にとっては笑いのタネでしょう。

しかし、現場で働いている人にとっては死活問題です。

 

「作画崩壊が起こる」ということは、「仕事環境が悪い」という事を表す指標でもあります。

もし作画崩壊を起こすような現場に出くわしたら、すぐにでも逃げ出すべきです。

決して恥ずかしい事ではありません。

 

災害が起きたら避難するように、仕事環境が悪ければ避難して当たり前なのです。

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