アニメーターを目指す人にとって、「いつアニメーターになったらいいのか?」という疑問があると思います。
高校を卒業してすぐに採用試験を受けるべきか?
それとも専門学校に行った方がいいのか?
この記事ではアニメーターになるタイミングによって生じるメリットやデメリットをまとめました。
Contents
どのタイミングでアニメーターになるか?
「アニメーターになりたい!」と思ったら、「いつなるのか?」を考える時がきます。
①高校を卒業してすぐに採用試験を受けるべきか?
②専門学校に行った方がいいのか?
③それとも4年制の大学へ?
それ以外にもたくさんの選択肢があると思いますが、今回は大きく3つに分けて説明していきます。
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①高校卒業後に就職
高卒の多くは18歳前後。
高卒でアニメーターになるメリットとしてはとにかく「若い」ということです。
情熱と体力の豊富な若い頃に現場入りできることで、早くに実戦のノウハウを学ぶことができます。
なので何らかの理由で就職を急いでいる人にはこれしかないかもしれません。
しかし、「早く」アニメーターになれることは必ずしも良いこととは限りません。
むしろよほどの理由がない限りは、急に就職しないほうが良いと思います。
高卒で就職するデメリットとして、「アニメ以外の経験値を習得するチャンスが減る」というものがあります。
もちろん、高校卒業までの人生次第なのですが、私が高校で得たものは学校での授業範囲の知識と、部活で得た体力くらいでした。
アニメーターは絵を描く能力以外にもたくさんの能力を必要とし、画力以外の武器があることが大きな強みになります。
技術がアニメ業界トップレベルならば、画力だけでも生きていけますが、そこそこの画力だとつらくなってきます。
そのためにもアニメーターとして生き残るため、もしくは通用しなかった時のためにも、絵以外の能力や経験値、資格などを得ることは大切になります。
②アニメ専門学校に行く
2年制の専門学校なら卒業時は20歳前後が多い。
私はアニメの専門学校の在学経験は無いので、専門卒のアニメーターから聞いた情報を元に説明します。
アニメ専門学校の大きなメリットは、アニメーターになった後に業界内のコネができることです。
アニメ専門学校に在籍すると、周りはアニメ業界に興味のある人や、実際にアニメ業界に就職する人が多くなります。
同業のアニメーターや、制作さんなど、学校で出会った友人関係によって横の繋がりができ、仕事や情報のやりとりができる強みがあります。
アニメ業界では情報の交換がとても大事になります。
会社によって悪習があったり、セクハラ、パワハラ、賃金の過剰な中抜きなどの被害から逃れるため。
また、良い仕事や、良い会社の情報を交換し合える相手がいることも大きな強みです。
専門学校のデメリットとしては、「アニメーターの技術を、現場入り前に習得できるとは限らない」ということです。
専門学校に行きたい人は、
「アニメーターになりたいけど必要なスキルや、仕事内容がわからないから学びたい」
「いきなり現場入りするのが怖い」
など思っていると思います。
しかし、「アニメの専門学校に行って、技術的に役立った」という体験談を聞いたことがありません。
もちろん学校によると思います。
私が聞いたこと無いだけで、素晴らしい学校もあるかもしれません。
ただ少なくとも「専門学校に行けばアニメーターの技術や知識が習得できる」と思わない方がいいでしょう。
逆に「ウチはしっかり指導している!」と自信を持って言い切れる学校があれば積極的に宣伝してほしいです。
学校の掲げる「アニメーターになれる」は何の売り文句にもなりません。
専門学校に行かなくても「なる」だけなら簡単だからです。
また、多大な入学金や授業料を失うというデメリットもあります。
「アニメーターの技術を学ぶこと」が最優先ならば現場に入ってしまうことが1番効率が良いです。
働いた方がわずかではありますが賃金ももらえます。
欲しいのは技術か、コネか、何を求めるか次第になります。
私は小さなスタジオの人事に少し関わったことがありますが、
現場としては「専門学校を出ている方が採用されやすい」ということはありませんでした。
単純に、画力と人格のバランスで採用を決めます。
応募者の比率的に専門卒の人が多いので、専門卒の合格率が高くなっているだけでした。
③4年制の大学に行く
4年制の大学卒は22歳前後が多い。
私の場合は総合大学の美術学科卒なのでここに該当します。
(美大の場合は経験がないので説明できません)
総合大学に行った一番のメリットは、アニメと関係の無い友人が出来たことです。
アニメ系の学校や職場に一度入ってしまうと、アニメに縁深い人間関係が作られます。
それはそれで楽しく、有益なのですが、アニメ業界以外の価値観を取り入れられなくなってしまう危険もあります。
大学で得た友人の存在は、アニメーターになった後も私にとってとても大きく、大切な存在となりました。
また、アニメ以外のことを学べたことも大きかったです。
油絵、日本画、陶芸、彫刻など、様々な芸術に触れることができました。
そして大卒の一般的な利点はの「大卒」という肩書を得ることや、資格などを得られるという点です。
目的の就職先がアニメーターだけであれば、肩書も資格も必要なく、必要なのは実力です。
しかし、世間の一般企業は肩書や資格を重要視します。
アニメーターになってずっと生きていける人はほぼおらず、9割が辞めると考えた方がいいです。
その9割が再就職する際、「絵が描ける」というスキルだけでやっていくのは選択肢を狭めます。
例えば、私の友人は大学で美術教師の資格を取ってから、アニメ業界に飛び込みました。
万が一のことを考えるのは「逃げ」ではなく、「賢さ」です。
デメリットとしては、とてもお金がかかります。
4年分の学費は高く、特に美術系だとより高くなります。
親が払ってくれるのか、奨学金制度などを使って自分で払う場合とで、大学の価値は大きく変わってきます。
そのあたりは各家庭や自分の金銭状況次第でもあります。
大卒やそれ以上の年齢でアニメーターを目指すと、現場のアニメーターの若さに焦る事もあると思いますが、気にしなくて大丈夫です。
そのほとんどが辞めるという現状もありますし、上達度合いはきれいな右肩上がりではないので、早いほど有利とは限りません。

重要なのは成長や変化
勘違いしないでおいて欲しいのは、「進学すれば何らかの能力がつく」というわけではありません。
進学しようが、高卒で現場入りしようが、何も考えず過ごせば18歳と22歳になんの差もありません。
30歳、40歳、50歳になっても18歳のような精神年齢のアニメーターは現場にたくさんいます。
そうならないようにしましょう。
今すぐアニメーターになった方がいい人
今すぐにアニメーターになっても問題ない人というのはとても少ないと思います。
アニメーターとして働くこと以外に何も興味を持てず、1日中絵を描き続けるのが苦ではなく、即戦力としての実力がある人です。
滅多にいないと思いますが、アニメーターを目指す時点で画力に不安の無い人は、その後の人生プラン次第で就職タイミングを選べます。
一生アニメーターでいるつもりなら「アニメーターに向いている性格」と「高い技術」
が必要ですが、それを満たしていればすぐにでもアニメーターになっていいかもしれません。


すぐにアニメーターにならない方がいい人
絵が上手いだけの人は気を付けてください。
絵が上手いことは良い事ですし、重要なことです。
それだけで、ある程度仕事には困りませんが、アニメーター歴が長くなれば長くなるほど「絵が上手いこと」は当たり前と見られるようになります。
その時になって「絵の上手さ」以外のことを習得するのは難しいのです。
なので絵が上手いからといって、すぐにアニメ業界に来るのは危険です。
早く入社することで得られる技術や報酬に大きな差があるような業界ならば利益がありますが、アニメーターはそうではありません。
年齢やキャリアに関係なく個人の「習得能力」と「作業量」次第です。
アニメーターになって得られるのは「仕事を効率よく処理する能力」「アニメ作りの知識、技術」です。
それ以外の技術、知識、経験はいったん働き出すと追加する余裕がなくなります。
賃金、時間、体力が奪われていく中で、仕事以外の経験値を自主的に得ることは難しい事です。
なので、今の自分に「絵を描ける」しかスキルが無く、そしてその技術がアニメ業界で通用しなさそうな場合。
今すぐアニメーターを目指さず、アニメ以外の経験や知識ををたくさん積んだ方がいいと私は思います。
それこそがアニメの仕事にも活かされます。
その後、それでもアニメーターになる理由と気持ちと技術がある場合、改めて目指しても遅くないのではないか。
アニメ業界にいた者として、そう思います。
最後に
私が「若いうちに勉強したほうがいい」と言う理由は、
若い頃の方が「感受性が高く、体力と時間がたっぷりある期間」だったと思っているからです。
なのでそれらを歳を重ねても持ち続けている人は、何歳になっても進化し続けます。
しかしアニメーターになると、この「体力」と「時間」はほぼ失われます。
そして多くの人はその仕事の過酷さから、感受性も失われていく傾向があります。
だからこそニメーターになる前も、なった後も、学ぶ心構えを失ってはいけません。
アニメーターになるタイミングは人生プランによって個人差がありますが、
アニメ関係以外の学習のタイミングは就職前が最適なのです。

