アニメ業界は個人情報が簡単に流出します。
そのことを知らずにアニメーターになると、思わぬ被害や、精神的苦痛を受ける可能性があります。
私がフリーランスのアニメーターとして知った、アニメ業界の仕事における情報管理の甘さを説明します。
この記事は基本的には私がフリーランスのアニメーターとして得た経験、知識を元にした内容になります。
また、記事内での制作進行さんの行為に対して否定的な事を言いますが、制作進行さん個人を責めるものではありません。
制作さんにそんな行為をさせる業界の風潮や、会社の指導の無さが問題です。

電話番号の流出
フリーランスアニメーターとして働く場合、携帯電話は必需品になります。
アニメ会社の固定電話、もしくは制作さんの携帯電話と仕事のやりとりを行います。
知らない番号からかかってくる
ここで問題なのが、当たり前のようにアニメーターの電話番号が流出していることです。
一人の制作さんに自分の電話番号を教えると、その制作さんの会社内では断りなく共有され、
さらには別の会社の知らない人から電話がかかってきたりします。
他社の制作同士が情報交換をしているのですが、アニメーターの個人情報まで交換しているのです。
これはマナー違反とかいうレベルではありませんが、アニメ業界では常識的に行われています。
これに関しては正直防ぎようがありません。
「人に教えないでくれ」と言っても、しばらくすると知らない番号からかかってきます。
アニメーターだけでなく、制作さんも離職率が激しく、辞めたあとにデータだけが独り歩きしているようにも感じます。
もちろん、真っ当な制作さんは「電話番号を他の制作に教えてもいいか?」と確認を取ってくれます。
会社の内情がわかる
会社によりますが、同じ会社内でも制作さん同士の横の繋がり(連携)が薄い会社もあります。
そういった所は「同じ仕事を複数の制作さんが依頼してくる」ということがあります。
そういう会社は、社内の連携がとれてないので何かしらの被害を受ける可能性が高いです。
電話が鳴るストレス
急に知らない番号から電話がかかってくることは、私にとってはかなりのストレスでした。
時間は有限なので、無益な電話は取りたくないものです。
しかし、フリーランスのアニメーターになると、電話はガンガン鳴ります。
仕事状況によっては夜中にもかかってくることもあり、逆に朝にかかってくることはほぼありませんでした。
自衛方法
このあたりは「スケジュールを守り、夜中は働かないようにする」という自衛で多少防げます。
電話内容のほとんどは「仕事依頼」と「仕事状況の確認、催促」です。
なのでアニメーター側が夜中に徹夜したり、徹夜するようなスケジュールにしなければ、
電話は少し減ります。
そして「夜中に電話をかけないようにしてください」と自分の意思を伝えることも大切です。
アニメーターも制作さんも必死なので、過労が進むと自分の都合しか考えられなくなっていきます。
なので「察してもらおう」というのは無理で、自分の考え、気持ちを互いにしっかり伝えましょう。
住所情報も共有される
自宅作業の場合は、自宅に制作さんが来ます。
つまり、住所を把握されるということです。
さすがに住所の場合は、知らない会社の人がいきなり自宅に来たことはありません。
ただ、同じ会社の制作さん同士には共有されています。
そして、やはり夜中に制作さんが家に来ようとします。
多くのアニメーターがそうだからかもしれませんが、
「アニメーターは深夜でも働いている」
というイメージが根付いているのかもしれません。
この自衛もやはり、「自分が夜中に仕事をしない」ことです。
「自分は日中に仕事をしている」というイメージを与える事ができれば、電話も昼~夕方にかかってきて、自宅にも夕方に来てもらうことが可能になります。
情報流出の危機感が無い
アニメ業界は契約書や書類というものがほとんど存在しない異常な業界です。
なので滅多に書類のやりとりはありませんが、請求書は必ず書くことになります。
その請求書も手渡ししたのち、移動中紛失するなんてこともあります。
アニメ業界はこの「紛失」の危険性を甘くみています。
請求書もそうですが、仕事の上がりすら紛失します。
実際に私が描いたレイアウトが納品後に紛失したことがありました。
紙での作業なので、現物が無くなったら描き直すしかありません。
描いた分のお金はもらえたものの、結局現物は見つからず、同じ仕事を2度することになりました。
さらに納品のやり取りも甘い。
というより危険です。
よく玄関のドアノブに上がりを掛けておくというやりとりを行います。
これは納品素材上が雨に濡れる可能性もあれば、盗まれる可能性もあります。
設定や資料などには「流出禁止」と印刷されているにもかかわらず、その設定や資料を玄関にぶら下げるという方法でやり取りするのです。
最後に
アニメ業界は「情報」というものを軽んじています。
とにかく仕事ができる人を集め、仕事が上がりきることしか考えていません。
それに至るプロセスや、モラルやマナーは度外視されており、
それにより思わぬ被害やストレスを受けることもあります。
この風習を正すのは困難です。
結果、「慣れるしかない」という状況ですが、「おかしい事である」という常識は失わないでください。
アニメ業界に染まりすぎると、おかしなことも「仕方ない」と考えるようになってしまいます。
しかし、そのほとんどの事は仕方ないことではなく、「おかしなこと」です。

