アニメーター

アニメーターは生涯在籍する職業に向いてない

アニメーターは「技術やノウハウの修練」には向いていますが、

「生涯在籍する職業」には圧倒的に向いてません。

それはなぜか?ということを説明していきます。

「そもそも人生において1つの職業に生涯在籍する必要はない」

と個人的には思っていますが、

「一生アニメーターでいたい」と考える人も多いでしょう。

 

アニメーターは生涯をかけてようやく1流になれる。
だからすぐに辞めるようでは駄目だ

そういう意見もあると思います。

 

しかし、それを言っていいのは、

3流にも生活できるだけの収入、保証のある業種だけです。

 

「生涯在籍する職業に向いていない」を具体的に言うと、

「60歳まで働き、その後年金で暮らすというという世間的イメージで人生設計をしている人には向かない職業」ということです。

 

その理由は大きくわけて3つあります。

年齢的の問題

1つめは、年齢の問題。

アニメーターは高齢まで働けません。

 

そもそも若いうちに辞める人が多いのですが、

辞める辞めないに関係なく、長く続けられないのです。

 

アニメーターに定年はなく、技術は修練するほど上がっていくので、60歳以降も働ける

私はアニメーターになる前、そう思っていました。

 

しかし実際のアニメーターは肉体、精神が酷使される仕事内容であり、

誰もが60歳まで働けるような仕事ではありません。

 

稀に働ける人もいますが、その「稀」はあまりにも条件が厳しいです。

 

・技術が業界内で高レベル。
(歳を取るにつれて求められるレベルも上がります)

・業界内での人との繋がりが強い。
(信用、実績、コネがある)

・体力があり、健康で体が頑丈。
(規則的な生活や、日々の運動が大事)

・仕事が評価されている。
(どれだけ描けるか?だけではなくどれだけ評価されているか?が重要。)

などの条件が必要です。

 

若いうちや短い期間なら、どれか1つでもあればなんとかなりますが、

高齢であるほど条件を多く満たす必要があります。

 

その難易度の高さから、この業界で高齢まで働ける人は少なくなってしまってます。

収入の問題

2つめは、収入の問題。

今や有名ですがアニメーターは低収入です。

 

アニメーターは実質、個人企業のようなものです。

そして企業には「安定した一定の収入源があること」が必要です。

アニメーターにはそれが決定的にありません。

 

実力、作業スピード、作品内容、スケジュールなどが原因で、収入にムラがあります。

 

固定給や拘束費は、会社や人によってはありますが全員ではありません。

特に拘束費は確実なものではなく、実力や成果が下がれは得られません。

 

さらに一般的な職と違い年功序列というものがなく、

「長くやっているから」ということ自体にステータスがあまりありません。

あくまで実力がある期間だけ評価されます。

 

こういうところはプロスポーツ選手と同じですが、収入の規模が違います。

現役でいられる期間の短い分、多くの収入があるべきですが、

アニメーターはその逆です。

 

選手生命は短く、収入は少ないのです。

保証の問題

3つめは、保証の問題。

アニメーターに保険、退職金などの保証がちゃんとある会社はまだ少ないです。

 

一般的に「特殊技能が必要で、希少価値のある仕事や」「肉体、精神的重労働」は、

賃金、保証などが好待遇であるべきですが、

アニメーターはどちらの条件も満たしているのに、保証を受けられる人は少ないです。

(アニメーターに限らず、例えば介護業界などが同様の問題を抱えています。)

 

保証がある会社も徐々に増えてきてはいますが、

「結局フリーになりたがるアニメーターが多い」という問題もあります。

 

「安定した収入が欲しいと」いう願望があるなかで、

「好きな作品を、好きな時に、好きなように描きたい」という願望も強いのです。

 

待遇は悪いけれど、この仕事が好きだし、楽しいから

自分にはこれしかできないから、今更辞められない

こういった気持ちで働く人が居続けてしまう業界なので、

あるとき病気になったりケガをした時に、それがきっかけで辞めざるを得なくなったりします。

 

私も稼ごうと必死になり仕事量を増やしたら腱鞘炎未遂になり、

数か月仕事が出来なくなったことがあります。

その間もちろんアニメーターとしての収入はありません。

そういうことが日常的に起こりうるのです。

 

「死ぬまで好きなことができるなら待遇が悪くても構わない」と言う人はアニメーターに多いですが、

「死ぬのが明日かもしれない」という想像力のある人は少ないです。

 

死とは生命のことだけではありません。

アニメーターとしての死はいつもすぐそばにあるのです。

 

これら3つの問題に加えて、アニメーターには1つの大前提があります。

他者評価によって自分の価値が決まる

会社で働くアニメーターは、他者評価で存在価値が決まります。

つまり、「自分の頑張りではどうしようもないことがある」ということです。

アニメーターとしての評価

基礎的な画力があればある程度大丈夫ですが、

それでも最終的に「使われるかどうか」を決めるのは他人です。

個人でアニメを作るのではなく、組織の一員を目指すならなおさらです。

 

さらにスケジュールなどは特に他人に左右されてしまい、

自分の努力では管理はできても、動かすことはできません。

世の中の評価

今までの絵の流行の変化を考えれば、

例えば20年後は絵の流行が大きく変わるはずです。

 

世の中(アニメ業界や消費者の求めるもの)が評価するものは、

日々変わっていきます。

たとえ自分の求めるものが不変であっても。

 

「その絵柄を描けるか?」ということもありますが、

「その絵柄を楽しんで描けるか?」ということが大事になります。

 

さらにそれは予測がつかないという不安定さがあります。

「好き」や「楽しい」は非常に不安定で、ものごとによって大きく変化するのです。

 

たとえば、

前回の作品はアクションシーンが多くて楽しかったけれど、

今回の作品は地味でつまらなかった

など、自分の好みによって仕事へのモチベーションが変わります。

それ自体は悪くないのですが、

問題は、「好みじゃない仕事しかない」ということがあり得るということです。

 

実際、私がアニメーターを辞める直前は、

面白いと思える作品がほぼありませんでした。

そうなってしまったら技術も収入も関係ありません。

働く理由が無くなるのです。

最後に

「楽しい」というのは、アニメーターが仕事を続けられる原動力の9割だと思います。

なのでそれを支えにしている人は、

一瞬にして存在価値を失う危険性を持っています。

 

現在のアニメーター志望者の中には「絵やアニメーションそのものが好き」というより、

「今放送しているアニメが好き」という人もいるでしょう。

そういう人は、「何十年もの間その時代に流行っているものを描く」ということに

楽しさを見いだせるかということも考える必要があります。

 

アニメーターは興味、関心、好き、楽しいというエネルギーを元に働きます。

そしてそれは目に見えないので無限に思われがちですが、

人によっては有限で、時には一瞬でなくなってしまう、非常に不安定なエネルギーなのです。

 

生涯をあずける仕事には一般的に「安定」が求められます。

しかし、アニメーターという仕事には逆に「不安定要素」がたくさんあります。

 

生涯という漠然としたものには、

アニメーターという不安定な職業は向いていないのです。

ABOUT ME
bebe
bebe
アニメ業界で得た知識や情報、自分の考えを伝えるためにブログを書いています。 アニメーターやクリエイターに技術の修練より大切なことを伝えたい。