アニメーターはどのくらいお金を稼げて、どのくらい過酷なのか?
そしてその仕事は自分に向いているか?
それはアニメーターになる前にある程度知ることができます。
その方法を紹介します。
自分がいくら稼げるのかを知る
アニメーターを目指す限り、低賃金問題とは一生付き合うことになります。
「アニメーターを目指すならば親の支援か、貯金が必要だ」
とよく言われるのは、アニメーターの多くが『自身の収入だけでは生活できない』という経験をしているからです。
生活できないという事実による恐怖とストレス。
これを本当の意味で知るのは、アニメーターになってからです。
しかし、それでは遅いのです。
そのためにも、『自分がアニメーターとしていくら稼げるのか』という事を事前にシミュレートするのが大事なのです。
動画マン体験
アニメーターは多くの場合、動画マンから始まります。
なので動画マンの仕事をアニメーターになる前に体験しましょう。
まず日曜日などを利用し、1日中「仕事だけ」をできる日を作ります。
そして実際の動画と同レベルの絵を1日何枚描けるか試します。
アニメーターには「今は実戦で使えないレベルだけど育成しつつ給料を払う」というシステムは基本ありません。
雇ったからにはムリヤリでもなんでも即実戦で使います。(絵は修正されますが)
実際にどんな仕事の仕方をしているのかは、検索すれば様々な動画などがあります。
もしわからなければ、やり方は我流でも構いません。
テレビ放送されているアニメの画面や、市販の原画集などを見ることで、
1枚の絵にどのくらいのクオリティや線の量が必要かわかります。
ちゃんとした動画を描くことではなく、プロレベルの絵を1日何枚描けるのか?を知ることが目的です。
朝10時に出社したとして作業スタート、途中ちゃんと昼食を取り18時でタイムアップ。
タイムアップの時間は変えても大丈夫ですが、翌日もそれ以降も、何年も同じ作業が続くことをしっかり想像して決めて下さい。
つまり本当にアニメーターになったつもりで1日を模擬体験するのです。
これは想像や計算だけでなく、
アニメーターになりたいと思っている人は必ず実際にやってみてください。
ではダメです。
こればっかりは実際にやらないとわかりません。
一ヶ月は日曜を休みとすれば26日。
動画を1枚200円で計算すると、1日10枚描けたら日給は2000円。
月収は52000円です。
会社によっては動画マンには固定給+出来高という所もあります。
そのあたりは自分の行きたい会社を調べて下さい。
これにより、「自分は動画マンとしてどれくらいの量を描けて、月収いくら稼げるのか」が、おおまかに解ります。

原画マン体験
「原画マンになれれば生活できる」という声もありますが、原画マンになっても基本は出来高制です。
ここからまた新しい事を始めるので、効率が下がり、逆に収入が下がる人もいます。
原画マンになっても『描いたぶんだけお金がもらえる』という基本システムは変わりません。
(会社や原画マンによっては、『拘束』というシステムがあります。
「1つの会社や1つの作品を専門でやるかわりに、その会社から固定給が支払われる」というものです。)
また、会社によっては入社していきなり原画マンから始まる場合もあります。
一生動画マンをやりたい人でなければ、いずれ原画マンを経験することになります。
動画よりも原画の方が向いているという人もいるので、原画マン体験もしておいた方がいいです。
やり方は基本的に動画マン体験と同じです。
市販のコンテ集などを買ってみて、それを元に原画を描いてみてください。
ここで大切なのは、どれだけ上手く描けるかではなく、どれくらいの時間と労力がかかるのかを知る事です。
原画の作業は1原と2原に別れていますが、仮に1原2000円、2原も2000円で計算してみてください。
1原ならコンテを見てキャラと背景込みの絵を1枚、それに加えて原画として必要だと思う枚数だけ絵が必要になります。
これらを『1カット』という単位で呼びます。
つまり1枚でも10枚でも1カットで、何枚になっても2000円です。(内容、枚数によって例外はあります)
2原の練習は難しいですが、原画集に載っている絵を模写してみてください。
それと同じくらいの労力と時間がかかると思ってください。
こちらも1カットが1枚でも10枚でも2000円です。
一般的なテレビアニメなら平均すると5枚くらいだと思うので、仮に『1カット5枚』でやってみましょう。
1日にどのくらい描けましたか?
1日に1原を1カットしか描けないなら月給は5万2000円。
5カット描ければ月給26万円です。
しかしこの計算は、日々減っていく体力で同じ量を生産し続け、体を壊さずにいることを前提としているので、だいたいこの通りにはなりません。
時間のある人は夏休みなどを利用して1か月やってみるのもいいかもしれません。
アニメーターになればそれを何十年も続けることになります。
『自分がどれくらいの量を、どれくらいの速さで描けるのか?』
ということを、アニメーターになる前に把握しておいてください。
アニメーターの仕事がどのくらい疲れるかを知る
1日にどれくらい働けるのか?ということをシミュレートをすることで、
アニメーターの仕事の疲労度も体験できます。
上記のシミュレートを実践したと仮定して話を進めます。
アニメーターは収入が低いため、1日中ほとんどの時間を仕事に費やします。
そしてそれが何日、何年も続きます。
多くの人が現場に入って初めてこの疲労を体験します。
しかしこれは会社じゃなくても出来る作業ですので、体験しておくべきです。
アニメーターは絵の上手さだけではなく、
そんな日々の生活に耐えるだけの体力、根気、集中力、仕事への興味が必要です。
繰り返しますが、
上記のアニメーター体験法は必ず実際にやってみて下さい。
この作業を「苦しい、嫌だ」と感じるならば長くアニメーターでいられません。
会社に入って商業アニメを作りたいならば、いつかはこの体験をすることになります。
この作業を「楽しい」と感じられる事こそが、アニメーターに向いているかどうかの前提条件になります。
これを楽しめた上でさらに「上手いかどうか」でふるいにかけられる。
それがアニメーターです。
最後に
これらをアニメーターになる前に行うことで、『自分がアニメーターになったらどれくらいの疲労と稼ぎが生まれるか?』を知れます。
アニメーターを目指す人は『自分の絵の上手さで通用するか?』ということばかり気にします。
しかし、画力問題はアニメーターの厳しさの一部でしかありません。
『どれだけ上手く描けるか』はもちろん大事です。
しかしそれだけではなく、
『自分はどれくらいのスピードでどれくらいの量が描けるのか?それはどれくらいの労力がかかるのか?その作業を楽しいと感じるか?』
ということをアニメーターになる前に自覚しておいて欲しいのです。
アニメーターという人生を楽しむ上では、これは『絵の上手さ』よりも大事なことになります。