アニメ業界について

ワンマン社長の会社で、新人教育係をさせられた時の話

新人教育は、その組織や業界が発展していくうえでたいへん重要です。

しかし、アニメ業界はそこがおろそかになりがちです。

私が新人の教育係をしていた時に考えたこと、感じたことをまとめました。

↓ツイッターでも新人教育に関して発言しました↓

ワンマン社長の仕切る会社は危険

私は小さな作画スタジオでアニメーターをやっていた頃、

新人教育係をしていました。

決して私が優秀だからとか、指導が上手いからといった理由からではありません。

 

私の所属していた会社はワンマン社長の仕切る小さな会社だったのですが、

この社長に人望が全く無く、入社した人が1年以内に9割辞めていきました。

私の同期もすぐに誰もいなくなり、「指導を出来るのが私しかいない」

という状態になっただけなのです。

 

アニメ未経験の人間が、入社わずか3年で上司も同期もいなくなり、

社内ではベテラン扱いされたのです。

今思うと異常な会社、社長だったと思いますが、

当時は業界の「常識」「基準」を知らず、これが普通なんだと自分に言い聞かせていました。

 

そうやってただ耐えることが自分の長所だと思い込み、

私は1年でほぼ全員辞めるような会社で、4年ほど働きました。

 

新人教育係への強制的任命

それでも毎年新人は入ってきます。

私しか「先輩」という立場の人間がいないので、私が新人の教育係をやるしかなかったのです。

ちなみに教育係に任命されたからといって、特別な賃金はでません。

自分の仕事をしつつ、新人全員(6人ほど)の指導や管理、

課題の制作、原画昇格試験のシステム制作などすべてを一任されました。

 

どう考えても一人でやれる量の仕事ではないですが、

「やるからにはしっかりやろう」そう腹を決めました。

皆、「社長が嫌いだから」という理由で辞めていくならば、

「この人がこの会社にいるから残ろう」と思える人物像を目指しました。

 

新人指導で私がやったこと

アニメーターになってからは、人に指導するのは初めてだったので

何をしたらいいのか全くわかりませんでした。

 

とりあえず、

「自分が新人だった時に嫌だったことは改善し、欲しいと思っていたことを与えよう」

そう思いました。

 

私が新人時代に特に嫌だったのは、

  1. 上がりのチェックをする先輩の出社が不定期
  2. 原画昇格の基準があいまい

という点です。

1は、自分が早く仕事を終えても、それをチェックする先輩の出社時間が遅かったり、

急にいなくなったりすることで自分がいつまでも帰れない。

ということがあります。

なので、「この時間には必ず会社にいる。いない場合は新人は帰宅して良い」

という決まりをつくりました。

 

2は、自分が何をどのくらい頑張ればいつ原画になれるのかわからない。

これでは新人のモチベーションは持たないです。

なので試験内容と合格基準を明確に公開しました。

 

そして私が新人時代にあったらいいのになと思っていたことも導入しました。

  1. 大事なことは新人全員が揃っている時に1か所に集めて言う。
  2. 新人が何が理解できて、何が理解できていないのかを知る。
  3. 見本となる行動を自分が率先して見せる。
  4. 一人一人、実力だけでなく性格も考慮して指導する。

1は、書き置きや、一人ずつに伝えていると非効率的だし、

「言った聞いてない」の問答になりがちだからです。

 

2は、新人が出来ない、理解していない事でも次々と話を先に進められる事が多かったから。

キャリアを積むほどに「自分の出来ることは他の人も出来て当たり前」という思想になりがちなので、

この時点で対策を打ちました。

 

3は、先輩が偉そうなことを言っても、その先輩が実際に何もしていない。

ということが多かったからです。

後輩は先輩が守っていないルールは守る気が起きないし、

「先輩が出来ないことは自分が出来なくでも仕方のない」と考えます。

 

4は、人それぞれ得意なことが違ったり、どう教えたら理解しやすいかなども違います。

少人数の会社だったからできたことですが、

新人それぞれにどんな指導をするかを考えたり、

上がりチェックをする人を、相性を考えてどの新人に割り振るか決めたしました。

人は性格面がやる気に繋がり、やる気が上達度に繋がると思ったからです。

 

会社は物ではなく、人

私なりに頑張ってみたものの、

それでもやはり辞めていく新人は後を絶ちませんでした。

 

私のやり方が間違っていたのかもしれませんし、

それとは関係無い部分で辞めていったのかもしれません。

(後で知ったことですが、ほとんどは社長が嫌で辞めたらしいです)

 

しかし、同期が辞めていくことよりも、

指導した後輩が自分よりも先に業界を去っていくことがとてもつらかったです。

1年間指導した新人たちがゴッソリ辞めたタイミングで心が折れ、

私もこの会社をやめました。

 

つらかったけれど、勉強にもなりました。

人前で話すのが苦手だったけれどそれも慣れていきました。

 

なにより教育に関して考えることで、

現場に何が足りなくて、何がいらないのが考えることができました。

絵を描いているだけではきっと考えなかったと思います。

 

アニメ業界は変えれなくても、小さな会社くらいは変えれると思ったのですが、

会社は甘くありませんでした。

 

会社は人です。

会社を変えようということは、人を変えようということ。

そう考えれば会社を変える、というのがどれほど困難なことなのか、

今ならわかります。

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bebe
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アニメ業界で得た知識や情報、自分の考えを伝えるためにブログを書いています。 アニメーターやクリエイターに技術の修練より大切なことを伝えたい。